源泉税Q&A

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  • 15退職後にストックオプションの権利行使をした場合の所得区分

    【問15】当社は、米国法人A社の100%出資の子会社であるが、A社では、従来からすべてのグループ会社の役員及び従業員を対象としたストックオプション制度を実施しています。
    このストックオプション制度により権利付与された役員等の権利行使の手続(権利行使の意思表示、株式の購入代金の国外送金及び株券の交付等)は、すべてA社と本人との間で直接行うことになります。
    この権利行使が当社の退職後に行われた場合の所得区分及び源泉徴収の取扱いはどうなるのでしょうか。
     

    【答15】ストックオプションとかRSU(リストリクテッドストックユニット)とか、日本でもここ15,6年で当たり前の報酬形態になっていますが、20年前は、ストックオプションがどういうものか国税庁でもよく分かっていなくて、国税局の職員が執筆していた相談Q&Aには、はっきりと一時所得と書いてありました。
     それがいきなり給与という解釈が出て、当時大変混乱しました。一時所得で申告していた方を給与に当たるとして追徴課税をして、かなり訴訟になりました。今現在は、法律で、給与と規定しているので問題はありませんが。
     さて、ご質問ですが、権利行使により取得した株式の取得価額と時価との差額に相当する経済的利益については、原則として、給与所得に該当します。ただ、国内払の場合は、源泉徴収は行われないので、自分で確定申告をすることになります。
    ただし、この権利が権利付与後短期間のうちに退職を予定している者に付与され、かつ、退職後長期間にわたって生じた株式の値上り益によるものと認められる場合には、雑所得に該当します。
    所得税法施行令第84条《新株等を取得する権利の価額》の規定は、我が国の会社法の規定に基づくストックオプション制度を前提に定められたものであることから、所基通23-35共-6の取扱いが外国法人から付与されたストックオプションに直ちに適用されるものではありません。
    しかし、外国法人から付与されたストックオプションに係る経済的利益は、次のような理由から、所基通23-35共-6の取扱いに準じて、米国の親会社から子会社の役員等に付与されたものも含め、給与所得として課税するのが相当であると考えられます。
    ①ストックオプションは、それを付与した者から成功報酬型給与として受ける報奨制度の一つとして使用者から役員又は使用人に対してその地位又は職務に関連して与えられるものであり、このことは外国のストックオプションについても同様であること。
    ②米国においては、従来からストックオプションに係る経済的利益は、親会社から子会社の役員等に付与されたものも含め給与所得として課税されていること。
    ③直接、雇用関係等のない子会社の役員又は使用人に対して親会社からストックオプションが付与された場合、それは、直接的には子会社における精勤を求める対価として付与するものの、その本質は、その勤務が親会社に寄与することに着目して付与されているものであって、ストックオプションの権利行使に係る経済的利益は雇用契約に準ずる関係に基づいて提供される個人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質をもった所得(=給与所得)と認められること。
    また、ストックオプションの権利行使に係る経済的利益は、株券の交付により与えられるものであり、一般的には、交付法人の所在地が当該所得の支払地とされるものと解されます。
    したがって、ご質問の場合は、国外払となり、源泉徴収は要しないこととなる。なお、株券を国内で交付するなど権利行使に関する一連の事務が国内において行われているときは、国内払とされることとなります。
    【関係法令】所令84-、二所基通23-35共-6  
       

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