16 非居住者となった代表取締役の報酬
【問16】当社は建築業を営んでいますが、事業規模も小さく使用人も少ないことから、代表取締役甲自ら使用人と同様に、地方現場等へ常時出張しています。 この度、外国の建設工事の監理業務のため甲も単身で出国しました。 国外勤務期間は工事完成までの3年間の予定であり、その間の国内での受注工事等の業務は、取締役乙が切り回し、重要な事項については、国際電話や書簡等で甲の指示を仰ぐこととしています。 国外での甲の仕事は工事現場の総監督であり、使用人と同様の勤務内容です。 この場合、当社が甲に支払う役員報酬については源泉徴収の必要がありますか。 |
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【答16】国内源泉所得に該当し、源泉徴収の必要があります。
非居住者の国外勤務に基づく報酬は、国内源泉所得に該当しませんので、我が国では原則として課税されないこととなります。
しかし、企業経営に従事する役員については、使用人のような一定の場所、一定の時間を使用者の指揮監督の下に労務を提供するという概念がなく、国内勤務かどうかの判定ができないことから、原則として、役員が受ける報酬については全額国内源泉所得とみなして課税されます。
ただし、商法上の役員であっても、国外において内国法人の使用人として常時勤務を行っている場合は、 使用人と同様に国外勤務となり国内源泉所得に該当しないこととされています。このため、「使用人として常時勤務している」かどうかを判定することが必要となります。 すなわち「使用人として常時勤務している」とは、国外において、使用人としての職制上の地位を有し、 かつ、現実に常時使用人の職務を遂行していることをいうものと考えられます。
しかしながら、ご質問の場合、甲は代表取締役であり、使用人としての業務を常時行うことはありえないことから、仮に外国において使用人と同様の仕事をしている場合であっても、甲に支給される役員報酬の全額が国内源泉所得となり、源泉徴収をする必要があります。
なお、我が国が締結した租税条約では、役員報酬についても短期滞在者の免税条項を適用するもの(日・ オーストラリア租税条約)もあるので、注意する必要があります。
<関係法令>所法161①十二、所令285所基通161-29