法人税Q&A

法人が区分所有するマンションの修繕積立金の損金の可否

【問15】当社は、今年完成したマンション(全100室)のうち5室を賃貸用として購入しました。
マンションの管理規約によると、マンションの管理組合に対し1室あたり毎月20,000円の管理費以外に30,000円の修繕積立金を支払うことになります。
国税庁のホームページの所得税の質疑応答事例の賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱いという質疑では、条件付きですが、必要経費となるという回答になっています。
 同じような条件なら、当社が支払う毎月15万円の修繕積立金は、必要経費としても問題はありませんか。
 

【答15】 国税庁のHPの質疑は所得税に関するもので、法人でも同様の取り扱いで良いとは、明確にされていませんので、不安になりますよね。
 
  修繕積立金は、マンションの共用部分の将来の大規模修繕等の費用に充てられる積立金なので、会計上は、毎月の支出時に
  (借方) 修繕積立金(又は前払費用) 150,000円 / (貸方) 現金・預金 150,000円
 と仕訳し、実際に10年後ぐらいに5室合計で10,000,000円の修繕費がかかった時に
   (借方) 修繕費 10,000,000円 /(貸方) 修繕積立金(又は前払費用)10,000,000円
 と仕訳するのが原則です。
 
 つまり、支出時ではなく、実際に修繕が行われた時点で必要経費に算入するのが原則となります。
とは言え、所得税の納税者である個人にとって、毎月支払っていて、結局自分のもとには戻ってこないお金であることから、ご質問の通り、国税庁のHPでは次の要件を満たせば、支払時に損金算入可能と説明しています。
 ① 区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること
 ② 管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと
 ③ 修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
 ④ 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること
 つまり、所有面積などをもとに各マンションの区分所有者の修繕積立金の負担額が決められ、必ず支払う義務があり、一度払ったものは返金されないという要件です。
 
 それじゃこれが会社にも適用されるかというと、固定資産の修繕については、20万円以下については、損金処理してもよい、又は、周期の短い費用については、損金算入してもよい、(法人税法基本通達7-8-3)という取り扱いが認められているものの、修繕積立金は、前払費用なので、この規定は使えず、少額でもあくまでも前払費用であり、実際に役務の提供(つまり修繕が実施)がされたときに費用化されるべきものと考えられます。

 しかし、上記①~④の内容を満たしていれば、実質管理費となんら変わらないので、修繕積立金が少額である場合は、積立金経理とする重要性は乏しいと考えられることから、所得税同様、経費に算入しても問題とはならないという解説書もあります。実務においては、所得税の取扱いではあるものの国税庁のHPにはっきり、経費となると回答しており、少額であれば、こういう修繕積立金の損金計上を否認されることはあまりないかもしれませんね。少額かどうかは結局事実認定となってしまうことになります。
 
 もちろん、数年先のマンションの大規模修繕計画が突然持ち上がった場合などで、多額の修繕積立金となった場合には、原則通り、前払費用と処理すべきと考えます。

 ところで、マンションの管理組合に支払う管理費は消費税においては、不課税となっているので、修繕積立金を支出時に費用とした場合も、不課税という扱いになります。

 消費税の仕入控除まで考えると、原則処理(支出時に修繕費等で処理)の方が得になるケースがあると考えられます。ただ、その修繕費の支払いが、マンションの区分所有者が個々に業者に支払う形をとらずにマンションの管理組合の全体の収支計算の中で完結すれば、すなわち、修繕費の清算の領収書が組合が発行する場合は、不課税取引とみなされことになると考えられます。

【関係法令通達】法人税法基本通達7-8-3、
   

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