法人税Q&A

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  • 会社設立時の役員報酬の決め方と支払いを始める期間について

    【問5】会社を設立する予定ですが、役員報酬をいくらにすればよいのか。また、いつから支払えばよいのですか。
     

    【答5】会社設立の際に最初に決めることのひとつに、役員報酬があります。
    以下、説明します。

    1 税務上の役員報酬


    税務上、損金として扱われる役員報酬は次の3種類に限られます。
    ①「定期同額給与」
    毎月一定額を支払う報酬で、設立時3か月以内に月額報酬を決める必要があります。定款又は、株主総会で決定します。 一般的な役員報酬であり、税務署に届け出をする必要はありません。
    ②「事前確定届出給与」
    所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与のことです。
    6月とか12月とか一般社員のボーナスの時期に支払われるケースが多く、役員にとってのボーナスみたいなものです。 事前確定届出給与に関する株式総会等の決議の日から1カ月を経過する日又は会計期間開始の日から4カ月経過日等のいずれか早い日、とされていますが、新設会社の場合は、設立後2カ月を経過する日までが届け出の期限です。
    ③「業績連動給与」
    業績に応じて支払う形態の役員報酬で、上場企業などが株式報酬と連動させて支給する給与です。  
    役員の内、専務取締役や常務取締役を除く、平の取締役で、部長や課長などとして使用人としての業務も遂行しているケース(使用人兼務役員と言います)では、ほかの使用人と同様に賞与を支払うことも可能です。他の従業員に対する賞与と同様に、全額損金に算入できます。

    2役員報酬の決め方


    役員報酬を決める際には、開業から決算期までの売上予測をもとにした月々の粗利益や固定費を算出し、利益予想を行い、役員報酬に回せる額を算出する必要があります。
     会社が金融機関からの融資が必要な場合等、会社に利益を残して経営の安定化を図りたい場合は、役員報酬を抑えます。 反対に、個人名義で住宅を購入したいといったケースなどでは、役員報酬を無理のない範囲内で高めに設定します。 あるいは、節税目的で節税となる最適な報酬を設定することも可能です。

    3 役員報酬を決める場合の注意点


    定期同額給与を変更できるのは期首の3カ月間だけですので、利益予想が大きく異なってしまうと多額の税負担が発生します。特に、期末に大きく売上が上がり、入金までに期間がある場合には、納税の時期に資金が足りないといった事態になりかねません。損金として算入できる定期同額給与をいくらにするか、慎重に判断する必要があります。
     また、役員報酬が高額になるほど、会社が負担する健康保険や厚生年金などの社会保険料も高くなります。 役員側からみても、社会保険料の負担が大きくなるだけではなく、個人の所得税は累進課税のため、所得が増えると所得税等が増え、税務上は不利になります。

    4 役員報酬の支払いを始める時期


    役員報酬は会社設立後3カ月以内に決める必要があるため、初めの2カ月は役員報酬をゼロとし、3カ月目から支払うことができます。利益が安定するのを待って、会社設立の半年後から役員報酬を支払うことにしてしまうと、全額が損金に算入できなくなります。支払ったとしても、法人税の申告で所得に加算されてしまいます。
    また、各月の16日以降に会社設立をした場合などは月の半分を経過していますが、役員報酬には日割りという概念はないため、全額払うか、翌月からの支払いにするかのいずれかとします。
    たとえば、4月16日に会社を設立し、役員報酬として50万円を支払い、5月以降から毎月100万円にすると、最初の月に支払った50万円が同額の金額とされ、50万円しか損金に算入できなくなってしまうので注意が必要です。

    5 役員報酬を変更するための方法


    役員報酬の変更が自由にできると、企業側が期末に役員報酬を変更して、納税額を自由にコントロールすることができてしまいます。そのため、前述のように期首から3カ月以内を除くと、原則として役員報酬を変更することはできません。ただし、例外的に事業年度の途中で、役員報酬の減額や増額を行えるケースがあります。
    ○役員報酬を減額又は増額できる場合
    役員報酬が改定できるのは、①臨時改定事由と②業績悪化改定事由の2つがあります。

    ①臨時改定事由

     その事業年度において、役員の職制上の地位の変更(定款等の規定、総会若しくは取締役会の決議等により付与されたもの),その役員の職務内容の重大な変更その他やむを得ない事情(例えば病気等で従事できないなど)によりされたこれらの役員の報酬の改定

    ②業績悪化改定事由


      経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情による改定。単なる一時的な資金繰りの都合や業績目標に達しなかったというのは業績悪化にはあたりません。

    6 役員報酬を変更する手続き


    株式会社で役員報酬の変更を行う場合には臨時株主総会を開催するなど、株主総会で決議を行って議事録に残すことが必要です。議事録がなかったり、役員報酬の変更 の理由に妥当性が認められなかったりする場合には、税務調査を受けた際に、役員報酬が損金不算入になり、追徴課税を受けることになるので注意しましょう。
    役員報酬は原則として事業年度の途中では変更できないので、会社設立の際には慎重に決定しましょう。
    会社として支払う法人税と個人の所得税や住民税、あるいは、双方が支払う社会保険料などをトータルで考えて、不利な額とならないようにすることが大切です。
       

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