ふるさと納税の限度額がいくらかという問い合わせが良く寄せられますが、2000円の支出で各地の返礼品等を受け取れるお得なふるさと納税の限度額は次の表のとおりです。
課税される所得金額 |
所得税の税率 (復興税含む) |
限度額 (住民税額は所得割のことです) |
1千円~ 1,949千円 |
5.105% |
住民税額 × 23.55851% +2,000円 |
1,950千円~ 3,299千円 |
10.210% |
住民税額 × 25.06579% +2,000円 |
3,300千円~ 6,949千円 |
20.420% |
住民税額 × 28.74389% +2,000円 |
6,950千円~ 8,999千円 |
23.483% |
住民税額 × 30.06750% +2,000円 |
9,000千円~17,999千円 |
33.693% |
住民税額 × 35.51956% +2,000円 |
18,000千円~39,999千円 |
40.840% |
住民税額 × 40.68348% +2,000円 |
40,000千円~ |
45.945% |
住民税額 × 45.39779% +2,000円 |
どうしてそうなるのか、ご興味のある方は、以下をお読みください。(^^)/
1 控除される金額の計算
ふるさと納税は、各自治体に寄附をした金額に応じて所得税及び個人住民税が減額される寄附金控除として取り扱われます。
具体的には、①所得税分、②住民税分、③住民税の特例分の3つに分かれます。
① 所得税分
寄附金(総所得金額等の額の40%を限度)から2,000円を差し引いた金額を所得金額から控除します。つまり所得税においては、寄附金控除は税額控除制度ではなく所得控除という形式で控除がなされ所得税額の減額となります。
結果として以下の金額が所得税額から控除されることになります。
(寄附金ー2,000円)× 所得税率 (復興特別所得税(所得税率×2.1%)を加算した率となります。)
② 住民税分
寄附金(総所得金額等の額の30%を限度)から2,000円を差し引いた金額の10%を税額控除します。
(寄附金ー2,000円)× 10% (※標準税率の市町村民税6%、都道府県民税4%)
③ 住民税の特例分(これがふるさと納税の加算部分です)
(寄附金-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
こういう計算式になるのですが、支出した寄附金から2,000円を控除した残りの金額をまず所得税を減額し、後の残りを住民税で控除しますという計算式です。
「10%(基本分)」というのは、上記②の元々の住民税における寄附金の税額控除分です。元々の寄附金の税額控除分が、10%減額されているので残りの90%について、所得税で減額された分の残りを住民税のこの特例で控除しますということです。
上記の所得税の速算表で、たとえば、課税される所得金額が6,950千円~8,999千円の復興特別所得税を含めた税率は、23.483%ですから、住民税でこの特例で控除されるのは、90%-23.483%=66.517%ということになります。
住民税の特例分=(寄附金-2,000円)× 66.517%
ただし、この特例分は住民税所得割額の20%が限度となります。
<具体的な計算例>
課税される所得金額が6,950千円~8,999千円の方が、ふるさと納税を102,000円した場合
|
寄附金の |
計算式 |
① |
所得税分 |
(102,000円-2,000円)×23.483%(所得税率) = 23,483円 |
② |
住民税分 |
(102,000円-2,000円)×10% = 10,000円 |
③ |
住民税の特例分 |
(102,000円-2,000円)×66.517% = 66,517円 |
①+②+③ |
100,000円(端数については切り捨てられる場合があります) |
他市町村に寄附した額の2,000円を控除した残りが減税されます。実質2,000円で各地の返礼品を受け取れます。
所得税率に応じた、住民税の特例分の割合は、次の表の通りです。
<住民税特例分の割合>
課税される所得金額 (所得税) |
所得税の税率
|
所得税の税率 (復興税含む) |
住民税の特例分の割合 (90%-所得税の税率) |
1千円~ 1,949千円 |
5% |
5.105% |
84.895% |
1,950千円~ 3,299千円 |
10% |
10.210% |
79.790% |
3,300千円~ 6,949千円 |
20% |
20.420% |
69.580% |
6,950千円~ 8,999千円 |
23% |
23.483% |
66.517% |
9,000千円~17,999千円 |
33% |
33.693% |
56.307% |
18,000千円~39,999千円 |
40% |
40.840% |
49.160% |
40,000千円~ |
45% |
45.945% |
44.055% |
2 2,000円の自己負担で寄附できる金額の上限の計算
寄附はいくらでも出来る訳ですが、ふるさと納税が単なる寄附と違うのは、寄附額のうちある金額までは、2,000円を控除した額が実際納付する所得税と住民税から控除されるという点です。
先ほどの計算例でお示ししたとおり、102,000円を他市町村に寄附した場合、結局、100,000円が、所得税と住民税が安くなるという仕組みです。つまり、住民税の所得割額の20%以内なら、2,000円の負担で様々な市町村の返礼品をもらうことができるということです。
この返礼品については、所得税法上、一時所得とされ、その利益(時価で評価)が50万円以内でしたら、税金がかかりません。
さて、この限度額ですが、算式で示すと以下の通りになります。
(寄附金-2,000円)×住民税の特例分の割合 ≦ 住民税額 × 20%
これを「住民税の特例分の割合」で割って展開すると、
寄附金-2,000円 ≦ 住民税額 × 20%/住民税の特例分の割合
∴ 寄附金 ≦ 住民税額 × 20%/住民税の特例分の割合 + 2,000円
となります。
具体的に当てはめてみます。
課税される所得金額が6,950千円~8,999千円の方の場合、住民税の特例分の割合は66.517%ですから、限度額は
寄附金 ≦ 住民税額 × 20%/66.517%+2,000円
→ 住民税額 × 30.0675%+2,000円
となります。
例えば、課税される所得金額が8,000千円(実際は、基礎控除額が所得税と住民税では違うので調整が必要ですが、そこは考慮せずに説明します。)の場合、住民税の所得割額は10%なので、住民税は800千円となります。
800,000円 × 30.0675%+2,000円 = 242,540円 が限度額と計算されます。
実際には1,000円未満のふるさと納税はないと思われるので、242,000円を寄附したとして、検証してみましょう。
|
寄附金控除の区分 |
計算式 |
① |
所得税分 |
(242,000円-2,000円)×23.483%(所得税率) = 56,360円 |
② |
住民税分 |
(242,000円-2,000円)×10% = 24,000円 |
③ |
住民税の特例分 |
(242,000円-2,000円)×66.517% =159,640円 |
①+②+③ |
240,000円(端数については切り捨てられる場合があります) |
③の住民税の特例分が住民税の所得割の金額の20%(80万円×20%=16万円)以下になっています。
同様に、各所得税の税率ごとに住民税にかける率を計算していくと次の表のようになります。
<所得税率に応じた限度額>
課税される所得金額 |
所得税の税率 (復興税含む) |
限度額 (住民税額は所得割のことです) |
1千円~ 1,949千円 |
5.105% |
住民税額 × 23.55851% +2,000円 |
1,950千円~ 3,299千円 |
10.210% |
住民税額 × 25.06579% +2,000円 |
3,300千円~ 6,949千円 |
20.420% |
住民税額 × 28.74389% +2,000円 |
6,950千円~ 8,999千円 |
23.483% |
住民税額 × 30.06750% +2,000円 |
9,000千円~17,999千円 |
33.693% |
住民税額 × 35.51956% +2,000円 |
18,000千円~39,999千円 |
40.840% |
住民税額 × 40.68348% +2,000円 |
40,000千円~ |
45.945% |
住民税額 × 45.39779% +2,000円 |
この表の住民税額はあくまでも、寄附する次の年に課税される住民税額のことです。
住民税は、所得税と違って一年遅れで課税されますので、年末時点までに来年の住民税を見積もることになります。
ご注意ください。
ふるさと納税の計算のブログなどで、住民税の20%までしか寄附できないという記事をみることがありますが、実際は、所得税の税率によって限度額が変わります。
所得税の税率が最高税率45%の方の場合、住民税額の45.39779%も寄附できることになります。
課税される所得が1億の方の場合で説明します。
先ほどと同じで、説明を簡略化するため、基礎控除額の調整計算を考慮せずに説明します。
課税される所得が1億の場合、住民税額は税率10%なので、10,000千円となります。
上の表に当てはめて限度額を計算すると、
10,000,000円 × 45.39779% +2,000円 = 4,541,779円 と計算されます。
4,541,000円寄付したとします。
|
寄附金控除の区分 |
計算式 |
① |
所得税分 |
(4,541,000円-2,000円)×45.945%(所得税率) =2,085,444円 |
② |
住民税分 |
(4,541,000円-2,000円)×10% = 453,900円 |
③ |
住民税の特例分 |
(4,541,000円-2,000円)×44.055% =1,999,656円 |
①+②+③ |
4,539,000円(端数については切り捨てられる場合があります) |
③の住民税の特例分が住民税の所得割の金額の20%(1千万円×20%=2百万円)以下になっています。
ところで、これまでの計算は、いわゆる一般の所得のみの場合ですが、土地等の分離課税や株式等の分離課税があった場合についてはどうか。
ケース1 寄附金額が総合課税の課税所得金額以下の場合
結論としては、寄附金額が総合課税の課税所得金額以下の場合は、上記の表の通りで構いません。
ただ、土地等の分離短期譲渡の場合は、所得税等30.63%で、住民税は9%ですから、この9%部分が住民税の所得割の金額
が増えることになり、その分限度額も増えます。
同様に、土地等の分離長期譲渡の場合は、所得税等15.315%で、住民税は5%なので、この5%部分が住民税の所得割の金額
が増えることになり、その分限度額も増えます。
ケース2 寄附金額が総合課税の課税所得金額を超え分離課税の所得から控除する場合、
寄附金額が総合課税の課税所得を超え分離課税の所得から控除することになる場合は、以下の様に計算されます。
① 土地等の分離短期譲渡所得の場合
住民税の基本分10%を差し引いた90%から、所得税から控除される土地等の分離短期譲渡所得の税率(30%×1.021=30.63%)
を控除し、それが20%以下ならOKなので、
100%-10%-30.63%=59.37%
20%÷59.37%=33.687% ∴ 限度額(短期譲渡の部分)=住民税額×33.687%+2,000円
となります。
②土地等の分離長期譲渡所得の場合
同じ考え方なので、計算式だけ示します。
所得税の土地等の分離長期譲渡所得の税率 → 15%×1.021=15.315%
100%-10%-15.315%=74.685%
20%÷74.685%=26.77914% ∴限度額(長期譲渡の部分)=住民税額×26.77914%+2,000円
となります。