3 相続物件を取り壊して会社名義で不動産を建築する場合
【問3】都内に父母が住んでいた戸建てがあったのですがこの度、私が相続し、この古い建物を取り壊して、私が代表者となっている会社名義で賃貸用建物を建築しようと思いますが、税法上何か問題がありますか。 |
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【答3】
あなたの所有の土地に会社名義の建物が建築されるということになれば、都内や大都市圏では、借地権が認識されることになります。
借地権が設定されればその分だけ、地主であるあなた個人の土地の評価が下がります。
今回あなたは、会社に建物を建てることを許可するわけですから、税法上は次の点を考慮する必要があります。
1 あなたが、会社から、借地にあたって権利金を受領する場合
会社に借地権が移り、会社は支出した権利金の額を借地権として資産に計上し、あなた自身はその
受領した権利金の額により、次の通り取扱いが変わります。
なお、借地権が会社に移る分だけ土地の相
続税評価額は低くなります。
(1)あなた(地主)の処理
① 権利金の額が土地の更地価額(時価)10分の5を超える場合
→ 借地権の譲渡があったものとみなされ、譲渡所得の収入金額となります。(所得税法33条、所得税法施行令79条)
② 権利金の額が土地の更地価額(時価)10分の5を超えない場合
→ 不動産所得の収入金額となります。(所得税法26条)
(2)借地人(会社)側の処理
会社は支出した権利金の額を借地権として資産に計上します。ただし、時価に比べて権利金の支払
額が低い場合、もしくは一切支払わない場合には、会社はあなたから「経済的利益の供与」を受けたものとして、その時価と支払額の差額を利益として計上する必要があります。その結果、資産へ計上する借地権の金額は「支払った金額+経済的利益の額」となります。
なお、借地権における「適正価格」とは、土地の時価に路線価図に記載されている借地権割合を乗じて算出したり、周辺の取引事例から割り出したりするものとされています。細かく金額が定められているわけではなく、許容される範囲内に収まっていれば課税はありません。
2 あなたが、会社から借地にあたって権利金等を受領しない場合
(1)あなた(地主)の処理
個人地主であるあなたが、権利金を受領しないで借地権を設定させた場合は、あなた自身には借地権
の設定について課税は生じません。
所得税法59条で、譲渡所得の起因となるものを会社への贈与した場合は、その個人に資産の譲渡があったものとみなすという規定があるのですが、所得税基本通達59-5で「法第59条第1項に規定する「譲渡所得の基因となる資産の移転」には、借地権等の設定は含まれない」とわざわざ規定してあります。
(2) 借地人(会社)側の処理
① あなたが、会社から「相当の地代」を受け取る場合
権利金を受取代わりに「相当の地代」(自用地の価額に対しておおむね年6%程度の地代)をあなた
が受け取っている場合は、会社に対して借地権の認定課税はありません。
② あなたが、会社から「相当の地代」を受け取らない場合
借地人である会社が借地権の価額に相当する経済的利益を受けたことになりますので、地主である
あなたから借地権相当額の受贈益があったものとして会社に借地権の認定課税がされます。
ただし、会社から「土地の無償返還の届出書」が提出された場合は、会社に対する借地権の認定課税はありません。この場合、あなたの相続時には更地価額としての(つまり借地権の減額がない)評価になります。