不動産Q&A

7「金売買による還付スキーム」

【問7】賃貸住宅を購入予定ですが、自動販売機による消費税還付という方法に代わって「金売買による消費税還付スキーム」という方法で、消費税の還付が受けられると聞きました。違法性はないのですか。
 

【答7】
 

 問6で取り上げたように「自動販売機による消費税還付スキーム」は、何度かの税法改正により、利用できなくなりました。

 金売買による消費税還付のスキームは、その税法改正のさらに隙間を狙った、租税回避スキームで、違法とは言えません。

 金地金取引を行う業者と不動産売買を行う業者が提携して行うことも多いようです。

 その手法は、以下の通り。

1 賃貸住宅等を購入した年度 (前提条件として、法人であること。)

① 不動産を購入する年だけあえて消費税の課税事業者となり、
② 賃貸用住宅等を建設又は購入し(契約ベースではなく引渡が必要)
③ 家賃収入(非課税)を極力、発生させず、   
④ 課税売上(金地金売上)を発生させ、消費税の還付を受けます。

例えば、
①賃貸用住宅を5,500万円(税込、消費税は10%なので500万円)で購入、
②初年度、住宅の引き渡しが12月で誰も入居していないので家賃収入は零、
③金地金を1,100万円(税込、消費税は100万円)で仕入れ、1週間後、金地金を同じ1,100万円(内消費税100万円)ぐらいで譲渡します。(以下、説明を簡単にするため金地金の仕入と売上は、同じ金額ということで説明します。)

 このケースの場合、一年目の消費税の申告では、非課税売上が0なので課税売上割合は100%となり、課税売上の消費税100万円に対し、課税仕入の消費税は、600万円(金地金分100万円+住宅用建物分500万円)となり、賃貸用住宅の消費税500万円がほぼ全額還付されることになります。

 もっとも、金売買の手数料は業者に支払うことになりますが…。

2 賃貸住宅等を購入した2年目3年目

 3年間は、免税事業者に戻ることができず、3年間で課税売上割合が著しく変動した場合には3年目に調整(還付された消費税を返還等)をするという制度になりましたが、逆に言うと、3年目に調整をしなくてもよいように、課税売上割合が住宅を購入した年度と比べて著しく変動させないようにすれば良いことになります。

 その道具として、考え出されたのが、金地金の売買です。

 自動販売機だといくら頑張っても、非課税売上の住宅貸付収入が増える2年目3年目には課税売上割合が著しく下落してしまい、結果として、3年目で調整せざるをえず、還付された消費税を返還させられてしまいます。

 その点、金地金は安定した資産で、いつでも換金することができるし、100万円ぐらいの売買を10回行えば、課税売上1,000万円ぐらいを達成することができます。

 また、価格も比較的安定しており、短期間の売買なら大きく損をすることはないと言われています。

 3年目、課税売上割合が著しく変動したときは、3年間の通算の課税売上割合に応じて、 既に還付された消費税額を戻さなければならない。 という規定になっているのですが、その課税売上が著しく変動したかどうかは、次の条件によります。


 この(イ)と(ロ)の両方に該当する場合は、調整計算が必要になり、初年度に還付された消費税の一部を返還することになります。前述した通り、該当しなければ調整計算はいらないことになります。

 通算課税売上割合とは、住宅を購入した年度とその後の2年間、合計3年間の総売上に占める課税売上の割合をいいます。

 次の例の場合は、3年目の調整計算は必要ないことになります。

 課税売上は金地金の売上、非課税売上は賃貸収入です。
 
   検証してみます。

   上記の(イ)の式に当てはめてみると、仕入課税期間の課税売上割合は、100%、通算課税売上割合は、60%なので、(100%-60%)/100%=40≦50となり(イ)を満たさないことになります。
 すなわち、3年目の課税売上割合が著しく変動した場合には当たらないことになります。
 

 但し、この事例だと、前期と当期については、金地金を購入するときにかかった消費税が全額控除できないことになります。


 前期(購入2年目)、金地金を900万円で購入した場合、消費税は90万円、課税売上割合52.94%なので、仕入税額控除にできるのは、476,460円となり423,540円は引ききれず消費税を納付しなければなりません。
 同様に当期(購入3年目)は、消費税50万円に対し、課税売上割合38.46%なので、仕入税額控除にできるのは192,300円となり、307,700円が引ききれない(=消費税を納めなければならない)ことになります。
  
  このように結局、前年(2年目)当期(3年目)で逆に消費税の負担が増えてしまうこともあります。まぁ500万円還付されたので、十分とも言えますが。


 次の例を見ていきましょう。

 初年度に課税売上を多く発生させ、2年目3年目に課税売上がなかったとしても、通算課税売上割合が50%を超え、3年目の課税売上割合が著しく変動した場合の上記(イ)の条件を満たさないので、3年目の調整計算は必要ないことになります。

ただし、国税庁が消費税に関して「課税売上割合の計算に含めると事業者の事業実態からかい離することとなる場合には,当該資産の譲渡に係る売上高を課税売上割合の計算から除外する。」という税制改正を行うとの話もあり、いずれこのスキームもできなくなる可能性が高いと思われます。(平成31年12月1日)

 令和2年4月に消費税法等の一部が改正され、令和2年10月1日より、居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の適正化ということで、居住用建物を取得した際の消費税については、仕入税額控除の対象外とされ、このスキームは利用できなくなっています。(令和2年6月追記)


  
詳細はこちら⇒

No.6421 課税売上割合が著しく変動したときの調整(国税庁HP)

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