相続・贈与Q&A

相続人がいない場合の相続

【問15】私は85歳の未亡人で、現在老人ホームに入所しています。子供はなく、もともと一人っ子で兄弟姉妹もいないので相続人はいません。
 資産は、夫から相続した土地建物(相続税評価額1億円)と5千万円程度の預金です。
 夫の姪であるA子が、夫の死亡後、私の面倒を見てくれていたので、財産の一部を相続させたいと思いますが、遺言書も書かずに私が亡くなった場合どうなるのでしょうか。
 また、A子が財産を相続した場合の相続税の計算はどうなりますか。
 

【答15 】あなたには、相続人がいないことになりますので遺言書を残さなかった場合は、次の通り財産が処分されます。
1 裁判所によって相続財産管理人(弁護士等の専門家)が選任されます。
2 選任された相続財産管理人は相続人がいないかどうかの確認を行うとともにあなたの財産を管理します。
あなたに負債があった場合、相続財産管理人は、不動産や株などの売却・処分を行い、債務を清算します。
3 債務清算後も財産が残っている場合、相続人がいないことが確定(相続財産管理人による確認調査から6か月経過後)すると特別縁故者が相続できる可能性が出てきます。これを特別縁故者に対する相続財産分与と呼びます。
 特別縁故者とは、被相続人の同居人、被相続人の介護者、被相続人の内縁の妻、その他被相続人と特別な縁故があった人などのことを言い、A子さんもこの特別縁故者にあたります。
 相続財産管財人は特別縁故者を積極的には探しませんので、A子さんは、特別縁故者ですと、自分で名乗り出る必要があります。
 そして名乗り出たA子さんに、①財産の相続を認めるかどうか、②全部相続させるのか、③一部だけ相続させるのかなどの判定を家庭裁判所が行います。A子さんが日ごろからあなたの面倒をどれほど見ていたのか等を総合的に勘案して相続できる財産の範囲を家庭裁判所が裁量により決めます。
4 A子さんが相続した財産以外の残りの財産は、国庫に納められます。
 
 なお、特別縁故者もいない、遺言書もない場合には、遺産のすべては国のものになるということになります。
 
 特別縁故者として財産を取得するには、複雑な手続を経ることになるので、夫の姪ごさんであるA子さんに、スムーズに財産を渡すためには、やはり、遺言書を残しておく必要があります。
 
 さて、A子さんが財産を相続した場合の相続税ですが、
① 法定相続人がいないため、基礎控除は3000万円のみ
② 取得財産は「相続財産法人」からの「遺贈取得」という扱いになり、分与された人(A子さん)が相続税の申告をします
③ 取得時期は分与が確定した時となり、そこから10ヶ月が相続税の申告期限
④ 取得者は配偶者や一親等の血族以外であるため、相続税が2割加算となります


   

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