所得税Q&A

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  • 19 飲食店の自家消費の処理について

    【問19】飲食店を経営していますが、従業員にいわゆる「賄飯(まかないめし)」を提供しています。私自身もその賄飯を従業員とともに食べています。
    店と自宅は別なので家族は、食べていません。
    私の場合は、自家消費の計上をどうすればよいのでしょうか。
    また、従業員に税金がかかる場合があると聞いたのですが、どういうことでしょうか。  

    【答19】飲食店の場合、店舗で事業主と従業員が食材を利用して、いわゆる「賄(まかない)」を提供するケースが多いと思います。
     食事は、各々が自分のお金で外食するというケースは、問題ありませんが、お店の食材を使って調理したものを食べる場合は、その「賄い飯」の原価(食材の価格)分を、仕入から除くか自家消費売上として、売上に上げなければなりません。  
     飲食店で自家消費の計上がない場合は、税務署から優先的に調査対象に選ばれてしまいます。
     自家消費の計上については、事業主本人と従業員に分けて処理することになります。
    1 事業主本人の場合
     例えば、食材の原価が400円だったとしたら、一日1食で、毎月20日程度食べるとすると 400円×20日=8,000円 年間だと8,000円×12か月=96,000円を自家消費として売上に計上することになります。
     仕訳は、
     ? 売上に単純に計上する方法
       事業主貸  96,000円 / 売上(自家消費) 96,000円
     ? 仕入から除く方法
       事業主貸  96,000円 / 仕入    96,000
      のいずれかになります。
    2 従業員の場合(法人の役員も同様)
     「 賄い」つまり食事の提供は、従業員への経済的な利益の提供ですので、原則として通常の現金による給与と同等と扱われ、従業員の所得税の対象となるとされています。これを現物給与と言います。
    その処理については、従業員から賄い代金を徴収するかしないか、徴収する場合はさらにいくら徴収するかによって扱いが異なります。
     (1) 従業員から全く賄代金を徴収しない場合
    食材の原価が400円だったとして、月20日勤務のAさんの場合は、400円×20日=8,000円 年間だと 8,000円×12か月=96,000円を自家消費として売上に計上するというのは、事業主本人と一緒なのですが、その金額は、Aさん給与とされ、Aさんに所得税がかかることになります。
      仕訳は、
      給与  96,000円  / 売上(自家消費) 96,000円
     月でいうと、8,000円が現物給与として、Aさんの給与に加算され、所得税の対象となります。  
    (2)従業員から賄代金を徴収する場合
     次に、従業員から賄代金を徴収する場合ですが、「賄い」を給与として課税されないためには、次の二つの条件を満たす必要があります。

      ?役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
      ?次の金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。

      (食事の価額)−(役員や使用人が負担している金額)  < 3,500円 
    この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を差し引いた金額が給与として課税されます。
     これがどういう意味かと言いますと
    賄の一食あたり食材費が400円で、従業員Aさんから200円を徴収し、残りを事業主が負担した場合、?の半分以上は満たしているものの月20日間働いた場合は、事業主の負担が200円×20日=4,000円と3,500円を超えているので、上記の?の条件を満たしません。事業主が負担した4,000円が給与とされます。
    仕訳は、
          現金   4,000円   / 売上(自家消費) 8,000円
          給与   4,000円
    現物給与として4,000円がAさんの給与に加算され税金がかかります。
     同じ条件で、Aさんが15日間働いた場合は、事業主負担が、200円×15日=3,000円と3,500円以下になりますので。Aさんには、課税されず、福利厚生費で処理できます。
     仕訳は、
          現金      3,000円   / 売上(自家消費) 7,000円
          福利厚生費   3,000円    
    となります。
     アルバイトやパート従業員の方の中には、扶養の判定の給与収入ぎりぎりで働く者もいるので、給与として課税されると扶養から外れたりするケースがあるので、注意が必要です。

     なお、食材の原価をいくらにするのかかケースバイケースですが、粗利を参考に計上すれば、問題ないと思われます。
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