所得税Q&A

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  • 5 為替差損益

    【問5】2011年4月に米国に持っていた不動産を100万ドル(当時のTTM83円)で譲渡し、譲渡代金を国内のM銀行の外貨預金にそのままドル預金として預けています。 米国の不動産の譲渡については、赤字だったので申告していません。国外送金等調書のお尋ねが税務署からも来ましたが、赤字なので申告しなくても良いと税務署からも言われました。 今回、銀行より、投資の勧誘があり、この預金を運用しようかと思っています。現在1ドルはTTM110円にもなっており、円に転換すると為替差益が発生すると思われますが、次の投資を選んだ場合、為替差益を認識する必要はありますか。 ちなみに、今日現在で円に転換すると、電信買相場TTBは、109円なので
    (109−83)×100万ドル=26,000,000円の為替差益となります。
    ケ−ス1 M銀行のドル建て普通預金からS銀行のドル建て定期預金への預け替え
    ケ−ス2 ドル預金からユーロ建て預金への預け替え
    ケ−ス3 ドル預金から外貨建てMMF(米ドル建公社債投資信託)への投資
    ケ−ス4 ドル預金から米国不動産への投資

    【答5】2011年当時は1ドルが80円程度だったのですね。  まず、保有している100万ドルですが、当時のTTM83円で評価すると、簿価は83,000,000円ということになります。これを現在のTTM110円で円に転換すると、1ドルあたり1円の手数料がかかりますので、実際はTTBの109円で計算することになり、円転後の価格は、109,000,000円となり、差引26,000,000円の為替差益となります。
     ご質問のケース1について、
     外貨建取引とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいい、居住者が外貨建取引を行った場合には、その外貨建取引の金額の円換算額はその外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額としてその者の各年分の各種所得の金額を計算するものとされています(所法第57条の3第1項)。
     ただし、外国通貨で表示された預貯金を受け入れる金融機関を相手方とする当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、上記の外貨建取引には該当しないものとされています(所令第167条の6第2項)。ケース1はこれに該当することから、外貨建て取引には当たらないことから、為替差益は生じません。
    ケ−ス2について
     為替差損益は一般的には異なる通貨の交換により発生するものですが、ご質問のように、円から米ドルに交換し、これをユーロ等他の外国通貨に交換した場合であっても、その外国通貨への交換時に、当該外国通貨(ユーロ)の額をその交換時の為替レートにより円換算した金額と当初の円から米ドルへの交換時の為替レートにより円換算した金額との差額(為替差損益)が所法第36条《収入金額》の収入すべき金額として実現したと考えられますので、これを所得として認識する必要があります。
     直接円に転換したわけではありませんが、円という尺度でユーロの現在価値を認識することで、為替差益を認識するということです。(あまりうまい表現ではありませんが)
    ケース3について
     ドル預金から、ドル建てのMMF(公社債投信)への投資なので、同じドルでの取引であり、為替差益は発生しないように思えますが、ご質問のように、外貨建の預金をもって外貨建MMFに投資した場合には、新たな経済的価値(その投資時点における評価額)を持った資産(公社債投資信託の受益権)が外部から流入したことにより、それまでは単なる評価差額にすぎなかった為替差益に相当するものが所法第36条《収入金額》の収入すべき金額として実現したものと考えられます。 このため、この外貨建MMFの投資金額の円換算額とその投資に充てた外国通貨を取得した時の為替レートにより円換算した金額との差額を為替差益(雑所得)として認識する必要があります。外国株式に投資した場合なども同様の取扱いになります。
    ケ−ス4 について
     既に説明しました通り、外貨建の預金をもって米国内の不動産をドル建てで購入した場合は、その投資時点における不動産の価格(円換算での取得価格)で購入したことになり、それまでは単なる評価差額にすぎなかった為替差益に相当するものが所法第36条《収入金額》の収入すべき金額として実現したものと考えられます。建物は、購入時点の円換算の金額で取得費が測定され、減価償却等で経費化していくことになります。
    【関係法令通達】所法第36条、57の3、第174条第7号、第209条の2、所令第298条


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