所得税Q&A

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  • 8 中古で取得した自宅マンションを、賃貸にした場合の建物の減価償却の方法

    【問8】平成25年4月3日に5,100万円で購入した中古マンションに家族で住んでいましたが、平成30年4月1日、自宅用の戸建てを購入、今まで住んでいた中古マンションを平成30年9月10日から賃貸にしています。
     この場合、中古マンションの減価償却の方法はどうなりますか。
     なお、中古マンションは、業者保有の物件で、契約書を確認したら、消費税が100万円と記載されています。
     また、建築日は平成19年2月10日でした。  

    【答8】ご質問の場合、1 建物価格の算出、2 自宅として利用したことによる建物部分の価値の減少の額を差し引いた、「未償却残高」の算出、3 中古資産の見積耐用年数による償却率による減価償却費の算定という順番に計算していくことになります。
    1 建物価格の算出
     マンションの価額は敷地権という土地の部分と建物部分の合計額で成り立っています。
     土地の部分は、会計上価値が減らないと考えられており、減価償却するのは、建物部分ということになりますので、まず、5,100万円のマンション価額の内の建物部分の価額を計算します。
     消費税が100万円ということは、平成25年当時は消費税率が5%の時代ですので、建物部分の取得価額は、100万円 ÷ 0.05 + 100万円 = 2,100万円 ということになります。
     あなたが購入したマンションは建物(税込み)2,100万円、土地部分(敷地権)3,000万円だったということになります。
     実務においては、中古資産の場合、売主が個人の場合は消費税を計算することはほとんどなく、取得費の土地建物の区分が不明であることが多いのですが、その場合は、こちらをご参照ください。
    2 自宅として利用したことによる建物部分の価値の減少の額を差し引いた、「未償却残高」の算出
     税法の言葉で言い換えると、“非業務用資産として使用していた期間」(自宅として使用してきた期間)における「減価の額」の計算を行い、この「減価の額」をその資産の取得価額から控除した金額(「未償却残高相当額」)をその業務の用に供した日におけるその資産の未償却残高とします。」”(国税庁HP)ということになります。
    具体的にどのように計算するのかというと、中古マンションの建物部分の取得価額2,100万円から、通常のマンションの耐用年数(鉄筋コンクリート造 47年)の1.5倍の年数を耐用年数とした場合の減価償却率により、自身が居住していた期間の減価した額を算出します。
    国税庁のHPには次の計算式が掲載されています。
     ご質問の場合これに当てはめますと
    ・マンションの耐用年数 47年 × 1.5 = 70.5  → 70 年
    ・耐用年数70年の旧定額法の減価償却率  0.015
    ・居住用として利用していた年数  5年5カ月 → 5年
     (居住開始日H25.4.3 賃貸用に転用した日 H30.9.10)
      21,000,000円×0.9×0.015×5年= 1,417,500円 居住用期間に減価した額
       21,000,000円−1,417,500円= 19,582,500円 賃貸用建物の「未償却残高相当額」
    3 中古資産の見積耐用年数による償却率による減価償却費の算定
     次に賃貸用に転用した後の減価償却費の決算を説明します。
    イ 償却方法の確認
     減価償却費の計算は、その資産の取得日に応じて、償却方法が異なります。
     取得日に応じた償却方法は下表のとおりです。
    取得年月日 建物 建物附属設備及び構築物
    平成10年3月31日以前 旧定額法又は旧定率法 旧定額法又は旧定率法
    平成10年4月1日から平成19年3月31日まで 旧定額法旧定額法又は旧定率法
    平成19年4月1日から平成28年3月31日まで 定額法 定額法又は定率法
    平成28年4月1日以後 定額法 定額法

     ご質問の場合、マンションの取得は、平成25年4月3日ですので、定額法になります。
     よく間違われるのは、賃貸用に転用した日とか、当初に建築された日とかですが、あくまでも、ご自身が購入された日で、減価償却の方法は決まります。
    ロ 中古資産の耐用年数
     中古資産のうち一定のものを取得した場合には、その資産の法定耐用年数によらずに、購入した中古資産の取得の時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とすることができます。
     ただ、実務において、建物の今後の使用可能期間の年数を合理的に見積もることは困難であることから、次の簡便法を使うことが多いようです。
    【簡便法】

      〇法定耐用年数の一部を経過した資産 → (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20/100
      〇法定耐用年数の全部を経過した資産 →  法定耐用年数×20/100
    (注1) 1年未満の端数は切り捨てた年数とし、その計算した年数が2年未満の場合は2年とします。
    (注2) この場合の経過年数は、新築等されてから取得した時までの期間になります。

      ご質問の場合、新築等された日は、平成19年2月10日、あなたが取得した日は、平成25年4月3日ですので、経過年数は6年となります。簡便法に当てはめて計算すると
    (法定耐用年数47年−経過年数6年)+経過年数6年×20/100 =42.2 →42年
     耐用年数は42年と計算されます。
    ハ 減価償却費の計算
      後は、通常の定額法の減価償却をしていけばよいことになります。
    ・建物の取得価額 21,000,000円 
    ・賃貸転用時の賃貸用建物の「未償却残高相当額」19,582,500円
    ・耐用年数42年の定額法の減価償却率0.024
    ・平成30年の賃貸開始日 平成30年9月10日 → 4カ月賃貸
     ∴平成30年の減価償却費 21,000,000×0.024×4/12=168,000円
     ∴平成30年末建物の未償却残高 19,582,500円−168,000円=19,414,500円
     以上のように計算されます。 なお、賃貸の用に供した年分で見積耐用年数による減価償却をしなかった場合は、その以後の年分で見積耐用年数による計算はできません。また、更正の請求もできませんのでご注意ください。
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