不動産Q&A

  • <不動産Q&Aへ戻る>
  • 10 不動産管理法人を利用した節税方法

    【問10】不動産管理法人名義で賃貸不動産を直接所有すると、相続税の節税になると聞きましたが、どうしてなのですか。
     

    【答10】問1で会社設立のメリットとして、相続税の節税になると回答しましたが、具体的に見ていきましょう。

    〇 節税の手法


     賃貸不動産を被相続人(つまり亡くなった方)が所有すると、その不動産が相続財産となります。
      事業用の不動産については、小規模宅地の特例という330㎡まで、評価額が50%に減額される特例がありますが、会社で所有するという手法は、また次元が違う節税になります。
     まず、会社を設立し会社名義で、賃貸不動産を購入します。この際、もちろん、購入した不動産の実勢価格(時価)が下がってしまう物件ではダメです。
    前問で説明した通り元も子もありません。
     ① 購入しても、価格が上がらないまでも、それほど下がらない不動産の物件(そのような物件があればですが)を選択して会社名義で購入します。
    ② この会社で不動産賃貸を最低3年間継続します。
    → 3年継続しないと、賃貸不動産の評価は、簿価(減価償却費を除いた価格)のままで、節税効果がほとんどありません。
      → 3年継続した場合、土地等が路線価による評価(おおよそ2割減)となり、建物が固定資産税評価額(2割~7割減)による評価となり、法人のバランスシートの資産側が大きく減額され会社の株式評価が低くなり、節税効果が極めて高くなります
     例えば、1億円の借金で、賃貸不動産を購入し、3年間賃貸する場合で説明します。

    つまり、3年後、株式の評価が零(マイナスは零)になります。
    【この手法の贈与における応用】
     この手法を利用すれば、贈与税がかからずに、子供たちに賃貸不動産を相続させることができます。
     何故なら、負債(借金)の方が多い会社の株式の評価額は、零なので贈与税はかかりません。
    つまり、評価零の株式を子供に贈与することで、賃貸不動産を相続させることができるわけです。

      遺産分割で難しいのが、土地家屋をどう分けるかです。
     現物の土地家屋を法定相続通り分ければよいのではというご意見もありますが、次にその相続人が亡くなった場合、その法定相続分を分けるのに一苦労です。海外など遠くに次の相続人がいたら、相続の際に同意をもらうために大変な労力が必要となります。
      このため、実務では、土地等の名義は、物件ごとに決めるべし!というのが原則となっています。
      そこで、不動産管理法人で不動産自体を保有すれば、相続の際の相続財産は、不動産そのものではなく、会社の株式ということになります。
     相続時には、ただ単に、株式を遺産分割協議で決めた割合で相続すればよいのです。このため、遺産分割の手続きが非常に簡素化されます。
    このメリットは、不動産管理法人に限らず、一般の法人でも大きなメリットになるものです。
      以前は、支出した保険料を全額損金にできる保険が多くあったのですが、現在では、将来、被保険者の死亡が原因でなくても返戻金があるような保険については、原則積立経理で、損金にはなりません。
     ただ、現在でもその保険期間に何かあった時には、死亡保険が降り、途中解約で返戻金ももらえる保険で全額が損金算入できるものもあります。解約返戻金が最も有利な時に受け取り、それ退職金を支払えば大きな節税効果があります。

     ある保険を例に説明します。
    ① 被保険者の死亡時の保証が1億円。
    ② 30歳の自分の息子を被保険者とし、返戻率の高い25年後(返戻率83%)に解約。
    ③ 25年間支払った保険料の総額約900万円。
     解約により会社に戻ってくる金額は、9,000,000円×83%=7,470,000円
     差引1,530,000円は、掛け捨ての保険のようなものです。
      一方、損金算入により減額された法人税等
     9,000,000×33%(黒字法人の場合、法人税+地方税)=2,970,000
     ,970,000円-1,530,000円=1,440,000円 
     つまり、1,440,000円 節税効果があったことになります。死亡時の保証額1億を確保しつつ、節税ができたことになります。
    もちろん、解約返戻金と同等額を退職金として支出しなければなりません。  

    inserted by FC2 system